アフリカ専攻に在籍していたときは、ガンビアの農村に住み込んで農業と社会関係に関する調査を行っていました。実際に村で生活をしたのは足掛け2年弱でしたが、開発コンサルタントとしてアフリカで対象地域の実態を把握するための調査や先方政府への技術協力などの仕事をするにあたって、大学院で調査をしていた時の経験が貴重であったと実感することが多々あります。
そのなかでも最も貴重であったのは、アフリカの農村に暮らす人々の生活についてのイメージを確立できていたことです。アフリカ専攻を修了してから、アフリカ各地でプロジェクトを実施するための調査などを行ってきましたが、現地の言葉をある程度理解し、利害関係のない人たちとともに生活したアフリカ専攻時代の経験は、なにものにも代え難いように思います。既にアフリカ専攻で過ごした倍以上の時間を社会人としてアフリカ各国で過ごしていますが、得られる情報量、情報の正確さは必ずしも時間に比例しないと実感します。
“自分たちのために何かをしてくれるのであろう外国人”に対して、本音ばかりが語られるとは限りませんし、現地の言葉を駆使できるようになるまで一つの地域にどっぷりと浸かることができない現在となっては、彼らの日常の会話を理解することもできません。
このような環境の中で、ガンビアで生活した2年弱の間に学んだことを活かしながら、可能な限り事実に即した情報を手に入れるべく業務にあたっています。例えば、互いの緊張を解すために即座に笑いを取ることのできる現地語を二つ三つ習得しておくこと、通訳によって英語やその他公用語に訳された言葉が本来の意味を正確に表しているとは限らないことを念頭に、現地語の単語をそのまま使った調査を行うといったことなどです。また、現地で物の値段を尋ねることが多々ありますが、それが日本円で幾らに相当するか、ではなく、それが現地の人の生活にとってどのような位置を占めるものなのかをガンビアでの経験から想像することができることも、業務を遂行する上で非常に重要な視点であると思っています。
他方で、アフリカ専攻に在籍していたときの経験が、消極的に作用していると思うこともあります。例えば、プロジェクトの活動が与えた影響について、一般化して記載することができない部分が気になってしまい、報告書を書くまでに時間がかかってしまうことや、調査結果をふまえて案件を検討する際にも、人々の生活様式などを十分に知らないままに提案することに不安が生じて、案件を提案するのに躊躇してしまうことなどです。
現地の人にとって少しでも有益なことができているのか日々悩みながら、ガンビアでの経験を補完しつつアフリカで仕事をしています。