アフリカ専攻の受験に関するQ&A
これまで、受験を考えている方からアフリカ専攻にお寄せいただいた質問を中心に、Q & Aにまとめました。
A1.海外へ行った経験がなくても大丈夫です。ただし、大学院生をみていると、入学前に海外へ行った経験のある人が多いのは確かです。海外旅行では、外国語の使用や町歩きの経験、お金の使い方、楽しみ方など、フィールドワークの楽しさと通じるところもあります。しかし、不安なときには、指導教員の現地調査に随伴し、実際にアフリカでの滞在の仕方や楽しみ方、研究手法を身につけることも可能です。
A2.フィールドワークの経験がなくても、大丈夫です。フィールドワークを学部時代に経験するのは人類学や地理学、農学、生物学など、一部の分野に限られるため、入学前にフィールドワークの経験のない人は多くいます。アフリカ専攻でのフィールドワークは、研究テーマや調査する国・地域によって、やり方も大きく異なります。住民への聞き取り、植物の生態や土壌の調査、狩猟・採集民や牧畜民の集落での住み込み、農村での共同労働、政府機関などでのインタビュー、公文書館における資料収集などを通じて、現地調査に取り組んでいます。入学後、1年次の前期に、地域研究とフィールドワークに関する基礎的な知識と技法を習得し、周囲の教員や研究者のやり方をまねながら、自分流のフィールドワークを組み立てていくことになります。
A3.地域研究は、文系・理系にまたがる学際的な研究分野ですので、大学院生の出身学部はとても多様です。実際には、文系では文学、法学、経済学、教育学、外国語学、商学、国際関係学など、理系では理学、工学、農学、環境学などの出身者が含まれます。アジア・アフリカ地域研究研究科の入学者出身大学学部等一覧 をごらんください。現在のアフリカを対象に研究する場合、複雑な事象が多く、既存の学問分野、つまり、人類学や社会学、地理学、生態学、農学、経済学だけでは対処しきれなくなっています。これらの分野を横断し、地域の自然、社会、文化、経済、政治などの実情を調査するというアプローチが地域研究で求められます。そのため、アフリカ専攻は文系理系を問わず、多様な分野からの受験生を受け入れています。
A4.原則、研究テーマは自分で決めなければなりません。受験に出願する際に、受験生みずからが調査地や研究テーマを設定し、自己推薦書を書いていただきます。地域研究の伝統とフロンティアを知り、問題意識や関心事項をみつける際にはアフリカ専攻教員による主たる研究成果 で紹介する文献などが役立つでしょう。しかしながら、その自己推薦書の研究内容のままで大学院の入学後に研究に着手する人は、どちらかというと少数派になります。入学後にゼミや授業(講義、演習)、文献研究、教員との面談、周囲の先輩や研究者との交流を通じて、みずからの学問的関心や興味を内省し、調査地や研究テーマを練り直していきます。教員や周囲の研究者からの助言や先行研究でなされている議論を柔軟に取り入れながら、より魅力的で実現可能な研究計画を立てていきます。
A5.アフリカ専攻では大学院生みずからが、主指導教員1名と副指導教員2名を決めています。5月のゴールデンウィーク明け、5月中旬には指導教員を決めるように推奨しています。入学前から主指導教員を決めて入学してくる大学院生もいますし、入学後に講義・演習を受けたり、教員と面談を繰り返しながら指導教員を決める大学院生もいます。教員紹介で各教員の研究テーマや専門分野、調査地域をご覧いただけます。
A6.アジア・アフリカ地域研究研究科では、長期にわたる現地調査を行えるように5年一貫制のカリキュラムが設計されています。下の図は、5年間で博士の学位を取得するための大学院生のスケジュールの1例です。もちろん、研究テーマや調査地域によって、学位の取得までの年数や現地調査の期間などには変化があることに留意してください。
1年次:1年次の前期に講義と演習を受講し、地域研究やフィールドワークの基本的な知識・技能を習得します。卒業単位のおおくは、1年次の前期にそろえています。また、感染症やフォールドワークの安全に関する知識も得ます。前期終了後の夏休みから秋ごろにかけて、初回のフィールドワークに向けて出国します。それまでに指導教員の指導の下で研究テーマや調査地の選定、現地語の勉強、調査道具の準備、予防注射の接種、調査許可証の発行などを行います。出国前にはゼミで研究計画を発表します。
2年次:1年次のフィールドワークのデータを整理し、2回目の現地調査にむけて、ゼミ発表をおこないます。このゼミでは、テーマの妥当性、データの種類と量、次回の調査への展望などが議論されます。また、2年次の5月には日本学術振興会の特別研究員(DC1)に申請することが可能となるので、大学院生の多くは申請書を準備します。多くの場合、夏ごろに3か月以上のフィールドワークを行った後、夏の終わりから秋にかけて2回目の調査のデータを分析し、10月ころにゼミで発表をします。このゼミでは、博士予備論文の構成、データ分析の結果や考察の妥当性などが議論されます。指導教員の指導のもと、博士予備論文を執筆し、12月中旬に提出します。その後、2月初旬の博士予備論文の公聴会にむけて、プレゼンテーションの準備をします。水曜ゼミや自主ゼミを繰り返して発表内容を推敲します。2月末に博士予備論文を完成させ、製本します。
3年次:多くの大学院生が博士予備論文でまとめ上げた研究を自身の関連学会で発表します。また、学術雑誌への投稿論文を執筆しはじめる大学院生もいます。こうした研究成果発表の活動の傍ら、博士論文に向けて研究テーマを発展させ、再びフィールドワークに向けて準備をし、出国します。とくに3年次から4年次にかけて行われる調査は博士論文の主要データを取得する調査であることが多く、指導教員と入念に研究をデザインしていきます。また、より充実した調査を行うために、みずから研究資金の獲得も積極的に行います。
4年次:3年次における長期調査でのデータを整理し、分析していきます。持ち帰ったサンプルで実験を行ったり、他の研究者との共同研究へと発展させる大学院生もいます。また、追加データが必要な場合は、再度フィールドワークに出かける場合もあります。膨大なデータをトピックごとに整理し、ゼミや学会での発表を重ねていきます。
5年次:博士論文の構成やストーリーを考え、執筆を始めます。学会での発表や学術雑誌への論文投稿と並行して行っていきます。12月に博士論文を提出し、1月中に博士論文の公聴会を行います。審査に合格した場合、3月には博士論文を製本し、3月末に京都大学博士(地域研究)を取得します。
A7.アジア・アフリカ地域研究研究科は大学院生みずからが研究テーマをさだめ、海外に長期間滞在しながら学際的なフィールドワークを行うことを想定しているため、5年一貫制に設定されています。そのため、5年間研究に従事したいという意欲の高い方に入学してほしいと考えています。一方で、2年次で博士予備論文を執筆し、修士の学位を習得して修了することも可能です。ただし、2年次修了とともに就職しようとすると、就職活動や採用試験とアフリカでのフィールドワークの時期が重複することもありますので、時間の調整が必要になります。在籍が2年間あるいは5年間にしろ、アフリカの地域に根ざし、ふかく研究するスタンスを身につけ、社会にとびたってほしいと思います。博士予備論文を執筆して修士の学位を取得し、社会で活躍している卒業生は多数存在します。
A8.研究テーマなどと関連し、いちがいに期間をいえるわけではありませんが、1年次の大学院生の多くは7月下旬から11月ごろまでにアフリカへ出発し、3ヶ月間ほどの調査をします。2年次にも、3ヶ月くらいの調査をおこないます。3年次から4年次になると、6ヶ月から1年ほどの現地調査に出かける人が多くいます。1年次からいきなり1年間の調査に出かかけるということは、まずありません。初めての渡航で3ヶ月ほどの予備的な調査をおこなって帰国し、教員や周囲の研究者との面談やゼミでの報告を重ねながらより洗練された研究テーマと調査手法を確立し、2回目以降の本格的な調査に臨むケースが一般的です。
A9.アフリカでの研究活動には、お金がかかります。査証や調査許可の取得、予防注射の接種、航空運賃、海外旅行保険の加入、現地での滞在費、調査道具の購入、調査助手への謝礼などに多額の費用がかかります。滞在費は、国によって物価が大きく違いますし、都市に居住するか、農村に居住するかによっても変わります。京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科では、これまでに日本学術振興会のG-COEや大学院改革プロジェクトなどに採択され、現在もアジア・アフリカ地域研究研究科付属の次世代型アジア・アフリカ教育研究センターに設置されている臨地教育・国際連携支援室との連携のもとでJASSO(日本学生支援機構)の海外派遣プログラムをはじめ、さまざまな外部資金を獲得し、大学院生の渡航費用をサポートすべく努力を続けています。
2年次以上の大学院生には、日本学術振興会の特別研究員(DCやPD)、京都大学教育研究振興財団や民間の研究助成へ申請し、自分で研究費を取得することを奨励しています。みずからが研究業績を積み重ねて研究費を獲得し、調査を遂行するというプロセスは、教員や研究員だけでなく大学院生にも求められるのです。
A10.当専攻にはアフリカ地域研究図書室が共同棟2階にあります。図書蔵書数は、和書6,900冊、洋書19,000冊と、現地語資料を含む多くの図書が取り揃えられており、国内でもアフリカ関連の学術書が蔵書された国内有数の施設です。そのほか、アフリカ言語の音声資料(Language)100件も所蔵しています。また、アフリカ地域研究に関する学術雑誌では和雑誌97種、洋雑誌380種を取りそろえています。さらに、アフリカ地域研究専攻の大学院生が執筆した博士予備論文164点や博士論文84点(2018年3月時点)も、この図書室で閲覧ができます。
自然科学的なアプローチを研究に取り込む場合、吉田キャンパス総合研究棟2号館の東に位置するアジア・アフリカ地域研究研究科全専攻の共同実験室を活用することが可能です。エネルギー分散型X線分析器、 全有機炭素TOC分析計、原子吸光分析器、NC分析器、マッフル炉、SALDレーザ回折式粒度分布測定装置、 ガス・クロマトグラフ、マルチプレートリーダ、リアルタイムPCR、イオン・クロマトグラフ、年輪計測装置、などの機器を利用することができます。
A11.日本社会で報道されるアフリカは、内戦や紛争、貧困、感染症といったニュースが多く、貧しく、怖いところというイメージが先行しています。そうした問題を抱えている地域が存在するのも事実ですが、わたしたちは先入観を排除してアフリカの実情を正確に把握し、安全を十分に確保したうえで、研究活動を従事しています。内戦や紛争のなか、現地調査をすることはありませんし、危険な感染症が蔓延するなか、滞在しつづけることもありません。大学や研究科、専攻単位で危機管理体制を構築しています。アフリカ専攻における安全基礎情報 、アジア・アフリカ地域研究研究科における臨地研究マニュアル をご覧ください。
A12.アフリカでは、コレラや狂犬病、破傷風、A型肝炎、B型肝炎、マラリアなど、日本の生活ではそれほど心配のいらない感染症が存在します。予防注射を受ける、生水は飲まない、なるべく蚊にさされないようにする、マラリアの予防薬を服用するなど、基本的なことを心がけることで、大幅にリスクを下げることができます。このような病気に対する基礎知識については、1年次の前期に抗議「熱帯病学」を通じて習得することができますし、毎年、5月ころには予防注射や病気に関するレクチャーを実施しています。また、エボラ出血熱の感染国への渡航は自粛し、滞在国で発生した場合には、海外・国内の報道の入手に努め、在外公館(日本大使館)と密接な連絡のうえ、滞在予定の可否を判断しています。
A13.卒業生の進路はさまざまです。博士号取得者では研究職に就く方も多く、アフリカ地域研究や人類学、国際関係学などを専門とする研究機関や大学の部局で活躍されています。また近年は公的機関や民間企業では海外で活躍できる人材を必要としています。修士号や博士号を取得した卒業生は、アフリカ専攻で習得した技能やフィールドでの経験、研究内容などが高く評価され、日本外務省や在外日本公館、JICA、新聞社、環境アセスメント業などをはじめ、アジア・アフリカ地域で活躍している卒業生も多くいます。もちろん、アフリカや海外と関連のない業種に就職する卒業生もいます。詳しくは、進路/就職状況をご覧ください。
A14.お仕事の内容にもよりますが、一般的には大学院での学業と仕事の両立は簡単なことではないと思います。まず第1に、京都のキャンパスにおける教育カリキュラムに参加し、単位を取得しなければなりません。ほとんどの大学院生が、1年次の前期に多くの講義と実習を履修し、必要単位の多くをそろえます。中でも月曜日の午前と午後に開講されている必修の授業と水曜日のゼミには参加する必要があります。第2に、アフリカにおいてフィールドワークを実施しなければなりません。職場での理解や同僚の協力は不可欠でしょうし、長期調査の場合には休職などが必要になるのかもしれません。詳しくは研究室訪問 で、教員に相談してみてください。
A15.入学試験の日程や募集要項、出願期間などの詳細情報は入試情報 をご覧ください。入学試験は一般入学、学内選抜、第3年次編入学の3種類の受験があります。また、過去問については過去3年度に遡ってアジア・アフリカ地域研究研究科の過去問題でご覧いただけます。ただし、図や英文の一部は著作権を侵害する可能性があるため、原典の情報を示すのにとどめている部分もあります。アジア・アフリカ地域研究研究科教務掛で過去問を閲覧することが可能です。
受験を考えている方を対象にしたオープンキャンパスや大学院説明会の情報は随時、アフリカ専攻の入試情報で公開しています。オープンキャンパスや大学院説明会では、教員との面談も行っており、入試や大学院での研究テーマなどについて具体的な話をすることができます。
アフリカ専攻やそのメンバーが主催する研究会などのイベントは、アフリカ専攻Webサイトのトップページ で随時情報を公開しています。また、そのページ上の右手にあるFacebookでも新着情報を投稿しています。両者で公開している情報は異なる場合もありますので、2つともご確認いただけたらと思います。さらに、アフリカ専攻の教員は全員が京都大学アフリカ地域研究資料センター(通称:アフリカセンター)に所属し、研究活動を行っています。アフリカセンターでも独自の研究会などのイベントや書籍、学術雑誌の出版など行っています。アフリカセンターのWebサイトやFacebookもご覧ください。